介護食には栄養があって喉の通りが良いものが適しているのはわかっているけれど、毎日の献立を考えるのが大変だと悩んでいる人はいませんか?
この記事ではそのような人におすすめの簡単に作れるスープレシピをご紹介します。
身体にやさしいスープ
介護食の中でもスープは比較的簡単に作ることができて材料費も安いため在宅介護だけではなく施設介護の現場でもよく取り入れられているレシピです。
例えば好き嫌いが多く栄養バランスの偏ってしまいがちな高齢者の方には、好んで食べない食材を全てミキサーにかけてポタージュスープにし、少しでも口にしていただくといった対応ができます。
また兵庫医科大学と共同研究し、フランス料理世界大会の日本代表シェフ髙山英紀さんが作った、嚥下障害のある方でも食べやすい「幸せのスープ」は、国産野菜を使っているため身体にやさしく、5分温めるだけで食べられる手軽さからYahoo!ニュースやMXテレビなどさまざまなメディアに取り上げられて話題となりました。
介護食におけるスープはこのように、高齢者の方のQOLを高めることのできるレシピとして、幅広く活用されているのです。
高齢者にスープがおすすめの理由
高齢者の方に介護食としてスープがおすすめの理由を3つご紹介します。
消化吸収が早い
介護食におけるスープは、どのようなレシピで作成しても消化・吸収が早いのが特徴的ですが、具体的にどのくらいの時間がかかっているのでしょうか。
食べ物は口から消化管を通って消化・吸収され肛門から排出されますが、消化液に含まれる消化酵素の働きで栄養素を吸収しやすい形に変化させて吸収するためそれなりに時間がかかります。
それぞれの消化器官で働く消化液や消化酵素、消化される栄養素と消化後に変化する物質は決まっているため表にまとめてみました。
消化器官 | 消化液 | 消化酵素 | 消化される栄養素 | 消化後の物質 | 吸収 | かかる時間の目安 |
口 | 唾液 | アミラーゼ | 炭水化物 | ブドウ糖 | × | 噛む速度によって異なる |
胃 | 胃液 | ペプシン | タンパク質 | アミノ酸 | × | 炭水化物→タンパク質→脂質の順に長くなる |
膵臓 | 膵液 | ・アミラーゼ
・トリプシン ・リパーゼ |
・炭水化物
・タンパク質 ・脂肪 |
・ブドウ糖
・アミノ酸 ・脂肪酸 ・モノグリセリド |
× | ― |
小腸 | 腸液 | ・マルターゼ
・スクラーゼ ・ラクターゼ ・アミノペプチターゼ ・ジペプチターゼ ・ヌクレオシターゼ |
・炭水化物
・タンパク質 |
・ブドウ糖
・アミノ酸 |
〇 | 消化と吸収を合わせて7~9時間 |
これらの消化器官を通った後、食べ物は大腸に25時間~72時間ほど停滞して排出されますが、食べ物によって大きく差が出るのが胃での消化にかかる時間なので、目安の時間を表にまとめてみました。
食べ物の種類 | 胃での消化にかかる時間 |
バター50g | 12時間 |
ビーフステーキ | 4時間15分 |
天ぷら、すき焼き | 4時間 |
焼き魚、煮魚 | 3時間 |
牛肉の煮物 | 2時間45分 |
刺身 | 2時間 |
ごはん、パン、麺類 | 2時間~3時間 |
おかゆ | 1時間45分 |
半熟卵 | 1時間30分 |
野菜 | 2時間~3時間 |
果物 | 20分~40分 |
野菜ジュース | 20分 |
胃に留まる時間が3時間以下の食品は消化が良いと言われますが、野菜を主に使用し煮て調理するスープは全体として消化にかかる時間は少なめとなります。
食べやすい
スープは具沢山でも柔らかく煮込んだり、ミキサーにかけて全て液体にしたりできるため、嚥下機能に問題を抱えている高齢者の方でも飲み込みやすいと言えるでしょう。
また高齢者の方の好みに合わせて温度調整も比較的自由にできるため、食べやすくする工夫も施しやすいのです。
栄養バランスが◎
スープは野菜でビタミン、肉、卵、シーフードなどでタンパク質、クルトンやオートミールなどで炭水化物、油やバターなどで脂質と、三大栄養素だけではなく他の栄養素も工夫次第でバランス良く摂取することが可能です。
1つのメニューだけで栄養バランスを整えるのは本来難しいことですが、スープは具材次第でそれが可能なのが大きなメリットだと言えるでしょう。
おすすめの介護食スープレシピ
おすすめの介護食として、日本の伝統料理の1つで旬の野菜や魚介類、豆腐などを出汁でのばしてスープ仕立てにした「すりながし」の基本レシピをご紹介します。
材料は季節の魚介、海藻、豆腐、乾物、果物を使用するのが基本となりますが、高齢者の方の好みに合わせてアレンジしてみてください。
作り方の基本の手順は次の通りです。
①食材を切る
②電子レンジなどで加熱する
③だしと塩を入れてミキサーかハンドブレンダーにかける
④みそを加え、混ぜ合わせて味を整える
⑤中火にかけ、片栗粉でとろみをつける
⑥完成
まとめ
介護食の中でもスープは消化、吸収が良くて食べやすく、栄養バランスも良いため高齢者の方に広く取り入れられているレシピだとわかりました。
旬や高齢者の方の地元の食材を取り入れるなど工夫することで、QOLの向上にもつなげられるため、ぜひさまざまな介護食のスープレシピを試してみてください。