業務用米の生産量について知りたいなら、まず農林水産省のデータを見た方がよいと聞くけれど、具体的にどんなデータを参考にすればよいかよくわからないと困っている人はいませんか?
この記事では農林水産省のデータを実際に見ながら、業務用米の生産量とその推移について解説します。
国内の米の生産量について
国内でのお米の生産量について、農林水産省が調査したお米の生産量の推移とお米の消費動向から紐解いていきましょう。
主食用米の全国ベースの需要量は一貫して減少傾向
農林水産省では1996年より毎年主食用米の全国ベースでの需要量を調査しているので、その推移を表にまとめてみました。
基準をクリアした安全で美味しい米
おいしいお米が国の基準をクリアした安全でおいしいお米だとするなら、その基準はどのようなものなのでしょうか。
表にまとめてみました。
1996年~1997年 | 2001年~2002年 | 2006年~2007年 | 2011年~2012年 | 2016年~2017年 | 2021年~2022年 | |
主食用米の需要量 | 944万トン | 872万トン | 838万トン | 813トン | 754トン | 702万トン |
主食用米の需要量は一貫して減少傾向にあり、以前は8万トン/年のペースでしたが、最近は10万トン/年と緩やかに減少のペースが増加しています。
参考:農林水産省「米をめぐる参考資料」
米は健康によいと思う、という意識は大きく変わらず
農林水産省が2020年2月~3月にかけて日本在住の男女3231人を対象に行ったアンケート調査の結果によると、5年前と比べたお米の消費量は「変わらない」と答えた人が59%、「減ってきている」と回答した人が28%、「増えてきている」と回答した人が14%でした。
また「増えてきている」と回答した人にその理由をたずねた所、18才~29才の男女では「お米が好きになったから・味が良くなったから」「お米が健康によいと感じたから」と回答した人の割合が多かったのです。
このことからお米が健康に良いと感じる日本人の意識は、若い世代にも変わらず受け継がれていることがわかるでしょう。
参考:農林水産省「米の消費動向に関する調査の結果概要」
食べ比べセットで試食してえらびたい
インターネットで検索すると、さまざまな品種を小分けにして少しずつ試食することのできる「食べ比べセット」を家庭向けに販売しているのをたくさん見かけます。
しかし、本来家庭用のお米より業務用米の方がお客様に提供する際、味や品質にこだわらなければならないため、試食へのニーズは高いはずです。
このことから同じ卸売業者でも、提案の際に食べ比べセットを提供してからお互い納得の上で販売を開始してくれる業者は信頼できると言えるでしょう。
米を利用した新たな商品開発等の取組の支援も実施
農林水産省では、上記のようなお米の需要減少が加速する中、お米の需要を拡大・創出し主食用米の需給ギャップを縮小するのを目的として、お米を利用した新たな商品開発などの取り組みも支援しています。
具体的には「米を利用した新たな商品開発等の取組の支援」といい、次のようなことを行います。
項目 | 実施主体 | 概要 |
新たな商品開発等に向けた体制構築の取組 | 事業実施主体 | 新商品開発などを行う事業実施者の公募、審査、採択など(事務局機能)新商品に関する優れたアイディアを競うコンテストの実施新商品の開発・販路開拓のための支援 |
新たな商品開発等の取組 | 事業実施者 | ・支援対象となる取り組み 事業実施者がこれまでに製造や販売を行っていない新たな商品の開発、 プロモーションなど事業実施主体が実施するコンテストの受賞アイディアの商品化・事業化 ・対象経費 市場調査、試作品の検討や製造、パッケージの開発、ラベルのデザインの作成、 成分分析、パンフレットの作成、試食会の開催、商談会への出展、テストマーケ ティング、機械の導入(レンタル・リース)に要する経費 ・補助率 定額(テストマーケティング、機械のみ1/2) ・補助上限/下限 1000万円/100万 ・採択方針 米の需要拡大・創出への貢献度合いなどに応じて外部有識者による審査委員会で判定 |
上記の事業における2022年度の予算額は4,900万円です。
参考:農林水産省「【事業のご案内】米を利用した新たな商品開発等の取組の支援」
食品ロスの削減に効果、輸出も拡大
SDGsの目標2として「飢餓をゼロに」が掲げられていますが、これを実現するためには食品ロスの問題を避けては通れません。
お米の食品ロスの削減につながる2つの新たな取り組みをご紹介します。
参考:日経文庫「SDGs入門」
玄米及び精米商品は令和2年3月27日より、年月日に加えて「年月旬(上旬/中旬/下旬)」表示
玄米と精米商品はこれまで「調製年月日」「精米年月日」「輸入年月日」を表示することとされていましたが、食品ロスの削減や物流の効率化を目的として「年月旬(上旬/中旬/下旬)」表示もできるようになりました。
この切り替えにより、食品ロスと管理コストの削減、災害などへの対応能力の向上、環境負荷の低減が期待されています。
参考:農林水産省「玄米及び精米の年月旬表示の導入について」
海外の日本食ブームでおいしい「日本米」を求める声。前年比+17%、輸出を拡大!
財務省の「貿易統計」によると2022年の米・米加工品の輸出数量は53,931トン、金額は613億円で、共に前年比+17%を達成しています。
海外での日本食ブームをきっかけに、お米だけではなく米菓、日本酒、パックご飯、米粉及び米粉製品などが香港、アメリカ、中国、台湾などを中心に輸出されるようになったのです。
農林水産省では今後も「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」などに力を入れ、海外の日本米へのニーズに応える体制作りに取り組む予定です。
家庭米の消費は減少。一方で外食の割合は増加
前の項目でご紹介した通り、5年前と比べたお米の消費量は「変わらない」と答えた人が59%、「減ってきている」と回答した人が28%、「増えてきている」と回答した人が14%だったため、家庭でのお米の消費は全体として減少傾向にあります。
しかし同じアンケート調査において、外食での主食選択は「お米」だと回答した人が62%、また外食で提供されているお米に「満足している」と答えた人も81%で圧倒的な1位だったのです。
これらのことから外食における業務用米のニーズは、変わらず高いことがわかります。
参考:農林水産省「米の消費動向に関する調査の結果概要」
まとめ
農林水産省が提供するお米の生産量の推移やアンケート調査の結果から、家庭用米へのニーズは減少してきているものの、業務用米を用いる外食や輸出へのニーズは高まってきているのがわかります。
最新のデータを紐解くことで、さらに業務用米についての理解を深めてみてください。