日本では健康増進法に基づき、国民の健康維持・向上を図る上で望ましいエネルギー及び栄養摂取量の基準を厚生労働大臣が「日本人の食事摂取基準」としてまとめ、5年ごとに改定を行っています。
この記事では最新の2020年版「日本人の食事摂取基準」を参考に、高齢者の方がお米から摂ってほしい栄養摂取量についてまとめてみました。
参考:厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
1.高齢者に適切な一日の食事量
高齢者とは65才以上の人を指しますが、栄養についは肥満などを引き起こす過栄養だけではなく、特に75才以上の後期高齢者が陥りやすい低栄養が大きな課題とされています。
低栄養に陥る要因には加齢に伴う疾病や孤独、経済的な問題などがありますが、健康障害になりやすい状態であるフレイルを起こしやすくなるのが問題だと言えるでしょう。
そのため最新の2020年版「日本人の食事摂取基準」では総エネルギー量に占めるべきたんぱく質由来エネルギー量の割合(単位:%エネルギー)について、65歳以上の目標量の下限を13%エネルギーから15%エネルギーに引き上げました。
これらのことを踏まえた高齢者(65才~75才)の推定エネルギー必要量は次の通りです。
男性 | 女性 | |
身体活動レベル1(低い) | 2,050kcal | 1,550kcal |
身体活動レベル2(普通) | 2,400kcal | 1,850kcal |
身体活動レベル3(高い) | 2,750kcal | 2,100kcal |
身体活動レベルとは普段の運動レベルを示す数値で、高齢者の場合は1が自宅におりほとんど外出しないか高齢者施設で自立に近い状態の人、2は自宅で自立している人、3は仕事に従事するかスポーツなどを行っている人を指します。
さらに詳しく高齢者に適切な栄養摂取量を知りたい場合は、2020年度版「日本人の食事摂取基準」の高齢者のページを確認してみましょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」高齢者
2.お米に含まれている栄養成分(種類・含有量)
文部科学省が公表している「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にして作られた「食品栄養データベース」によるとお米(白米)に含まれる栄養成分は次の通りです。
栄養成分(可食部100gあたり) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | カルシウム | ビタミンB1 |
お米(白米) | 156kcal | 2.5g | 0.3g | 37.1g | 3mg | 0.02mg |
お米はさまざまな栄養素をバランス良く含んでいるため、高齢者のフレイルを防ぎ必要な栄養摂取量を満たすためにも積極的に摂取したい食品の1つだと言えるでしょう。
3.高齢者に不足しがちな栄養、「お米」で補える栄養
お米に含まれる栄養素はそれぞれ高齢者の身体にとってどのような働きをしているのかを見てみましょう。
a.タンパク質
三大栄養素の1つで、血液や筋肉など身体を作る役割を果たす栄養素です。
日本の高齢者においては、男性は1日に48 g、女性は1日に 43.3 g以上のたんぱく質を摂取すると、これよりも少ない量を摂取している場合と比較して、フレイルのリスクが低くなると報告されています。
b.脂質
三大栄養素の1つで、エネルギー源となるだけではなくホルモンや細胞膜、核膜を構成したり、皮下脂肪として内臓保護や体温調整の役割を果たす栄養素です。
日本の高齢者においては脂質の摂取量の平均値が目標を下回っているとされているため、お米を食べるよう意識すると必要な脂質が摂取できるようになるでしょう。
c.炭水化物
三大栄養素の1つで、3つの中では最も早くエネルギーに変換されるという特徴を持つ栄養素です。
また脳のエネルギー源としても重要なため、高齢者においてはフレイルを予防するためにもしっかりと摂取したい栄養素だと言えるでしょう。
d.カルシウム
骨や歯を作る栄養素で、厚生労働省の調査結果ではカルシウム吸収率は18才~29才で30%ですが、70才以上では25%と、年齢を重ねるほど低下することがわかります。
特に女性は骨粗鬆症を予防するためにも、お米を食べて積極的にカルシウムを摂取するのが望ましいでしょう。
参考:厚生労働省「カルシウム」
e.ビタミン
ビタミンは健康を維持する働きのある栄養素で、 近年は認知機能低下とビタミン摂取の関連が研究されるようになりました。
まだはっきりとした結果は得られていませんが、高齢者は積極的に摂取するのが望ましいでしょう。
4.まとめ
高齢者の栄養摂取量は身体活動レベルによって異なりますが、特に後期高齢者の低栄養が大きな課題となっているため、栄養バランスの良い食生活が大切だとわかりました。
お米は三大栄養素や他の栄養素を豊富に含む食品のため、高齢者の人は積極的に食事に取り入れ、フレイル予防に役立ててみてください。