基礎疾患として糖尿病を抱えた高齢者の方向けには、なんとなく糖質の少ない介護食が必要なのではないかと思うけれど、詳しいことはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では高齢者で糖尿病の方向けにはどのような食事メニューが望ましいのかをレシピも含めて解説します。
高齢者の糖尿病対策
現在糖尿病は年齢にかかわらず発症する仕組みと病態によって分類されています。
1 型糖尿病は、主に自己免疫反応で膵β細胞が破壊され、インスリンが不足することで発症する糖尿病のことで、若い人に多く初めからインスリン治療が必要となります。
また2 型糖尿病は、インスリンの分泌が低下する遺伝的な体質に、過食、運動不足などの生活習慣が原因の内臓脂肪型肥満が加わって、インスリン作用の需要と供給のバランスが崩れてしまい発症する糖尿病で、30才以上で多く発症し治療は主に食事療法、運動療法、薬物療法です。
高齢者においては2型糖尿病が多くなりますが、次のような特徴があります。
・食後に高血糖や低血糖を起こしやすい
・腎機能などの低下により薬物の効果が強くなりやすく、副作用も生じやすい
・動脈硬化などの合併症をすでに発症している場合がある
・認知症・認知機能障害、うつ、日常生活動作(ADL)の低下やサルコペニアなどの老年症候群を引き起こしやすくなる
このことから高齢者の場合、一般社団法人日本糖尿病学会の定める血糖コントロール目標を順守することばかりを重視するのではなく、治療目標を認知機能やADL、他の疾患なども考慮して個別に設定するのが望ましいと言えるでしょう。
高齢者における糖尿病の特徴や治療目標を踏まえた食事管理のポイントを3つご紹介します。
食後の急な血糖値の上昇を抑える
高齢者の方が食後に高血糖を起こさないようにするためにも、食事管理においては急な血糖値の上昇を抑えるように注意する必要があります。
具体的には食物繊維を豊富に含む食品を先に食べることで血糖値の上昇、体重の増加を抑えることができるのです。
わらび、大豆、のり、わかめ、きのこ類などには食物繊維が豊富に含まれているため、これらの食材を使ったレシピを用いたおかずを加え、先に食べていただくようお声がけをするのが望ましいでしょう。
腸内環境を整える
食物繊維を豊富に含む食品を摂ることは、糖尿病の発症リスクを低下させるだけではなく空腹時血糖の低下をもたらすことから、一般社団法人日本糖尿病学会の定める「糖尿病診療ガイドライン2019」では、摂取目標量を 20 g/日以上とすることを推奨しています。
適量を食べる
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準2020年度版」では基礎代謝量と身体活動レベルから推定エネルギー必要量を算出するとしています。
しかし糖尿病の高齢者の場合、身体活動量と代謝の量、体重の変化などを個別に鑑みてエネルギー必要量を定めるのが望ましいでしょう。
医師の指示する量を守って食事を提供することが大切です。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年度版 糖尿病」
介護食としての糖尿病食
介護食として糖尿病食を提供する場合、どのようなことに気を付けるのがよいのでしょうか。
ポイントを2つご紹介します。
食物繊維、ビタミン、ミネラルを摂る
血糖値を下げて体重の増加を抑えることのできる食物繊維、糖尿病に良い影響をもたらす可能性があるとされているビタミン、ミネラルを積極的に摂取するようにしましょう。
規則正しくゆっくり食べる
早食いや朝食を抜くなどの食習慣は、糖尿病における食事管理においては望ましくありません。
早食いの癖がある方には「ごゆっくりどうぞ」、朝食を抜く方には「お味噌汁を飲んでみませんか?」といった声がけをするだけでも少しずつ食習慣に変化が表れるため、根気よく食生活を整えていくことが大切です。
おすすめ介護食 糖尿病食レシピ
温野菜とお肉が両方摂れて身体が温まるポトフをご紹介します。
材料(1人分)
・ソーセージ(2本)
・キャベツ(100g)
・じゃがいも(1/2個)
・玉ねぎ(1/4個)
・ブロッコリー(3房分)
・セロリ(5cm程度)
・水(400ml)
・固形コンソメ(1/2個)
・粒マスタード(小さじ1)
作り方
①キャベツ・玉ねぎを小さめ(高齢者の方の噛む力と飲み込む力に配慮する)に切る
②セロリの筋を取って斜め半分に切り、じゃがいもは皮をむく
③鍋に水、固形コンソメ、切った野菜を入れて蓋をして火にかけ、煮立ってから中火にして10~15分間煮る
④ウインナーソーセージとブロッコリーを入れて5分煮る
⑤器に盛り付け、お好みで粒マスタードを添えて完成
具の大きさ、柔らかさなどを自由に調整でき食物繊維が豊富に摂れるので、介護食における糖尿病食としては食べやすいでしょう。
まとめ
高齢者が糖尿病の場合の食事メニューでは、食物繊維やビタミン、ミネラルを積極的に摂取できるレシピを考え、早食いや欠食を防止することが大切だとわかりました。
この記事を参考にして、医師の指示を守りながら美味しい糖尿病食を作ってみてください。