高齢者の方にはなるべく安全で美味しいお米を食べてほしいけれど、お米が安全かどうかは何を目安に判断すれば良いのかよくわからない人も多いのではないでしょうか。
この記事ではお米の安全基準とは何かから鮮度の区分まで詳しく解説します。
お米の安全基準
お米が安全かどうかは1つの基準だけでは測ることができません。
例えば秋に収穫したばかりの新米でも、人間の身体に影響を及ぼすほど農薬が使用されていたとしたら、それは安全なお米とは言えないでしょう。
法律を基に国で定めているお米の安全基準を5つご紹介します。
国が定めた農薬使用基準
国が法律に基づいて定めた農薬使用基準は大きく3つに分類されます。
農薬使用基準の種類 | 概要 |
農薬登録保留基準値 | 農薬利用に伴う被害防止の観点から、農薬取締法に基づき環境大臣が定める基準値 |
残留農薬基準値 | 農産物を食べた人の健康が損なわれないよう、食品衛生法に基づき定められた農作物中の残留農薬の基準値 |
環境基準 | 人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準 |
いずれも農薬使用によって人の健康が損なわれないようにするという目的から定められた基準であることがわかります。
詳細な数値についても知りたい方は、農林水産省のホームページで確認することをおすすめします。
放射性セシウム濃度が基準値を超えない米のみを出荷
お米については、放射性セシウム濃度が基準値を超えない米だけを出荷するため、作付け制限、吸収抑制対策、収穫後の検査を組み合わせた安全確保の取組みを国が実施しています。
また食品中の放射性物質の基準値は、人が食品を食べ続けた時、その食品に含まれる放射性物質から生涯に受ける影響が十分小さく安全なレベル(年間1ミリシーベルト)となるよう定められているのです。
放射性セシウムの基準値は次の通りです。
食品の種類 | 飲料水 | 牛乳 | 一般食品 | 乳幼児用食品 |
基準値(ベクレル/kg) | 10 | 50 | 100 | 50 |
この中でお米は一般食品に含まれるため、基準値は100ベクレル/kgです。
食品衛生法に基づく規格基準として、お米(玄米)のカドミウムの基準値(含有量)は0.4ppm
公害病の1つであるイタイイタイ病の原因物質として知られるカドミウムは、食品衛生法に基づく基準値が次のように定められています。
食品の種類 | 米(玄米及び精米) | 清涼飲料水(ミネラルウォーター類) |
基準値 | 0.4 ppm(mg/kg)以下 | 0.003 mg/L 以下 |
この基準値は合理的な範囲でできるだけ低く設定されているため、カドミウム含有量が基準値以下のお米は安全だと言えるのです。
参考:厚生労働省「食品中のカドミウムの規格基準」
品種が確認された種子を使用し、育苗、栽培・収穫、乾燥・脱穀、保管
日本では種苗法に基づく品種登録制度により、新品種を育成した人が品種登録をすると知的財産の1つである「育成者権」が付与されます。
もし品種登録制度がなければ、一度新品種の種苗を手に入れた人は誰でも簡単に育苗し、種苗を販売することが可能になってしまうでしょう。
そのため品種登録された種子を使って栽培し収穫されているお米は、誰がどのようにして育成したかが明らかであるため安全だと言えるのです。
参考:農林水産省品種登録ホームページ「品種登録制度と育成者権」
農産物検査
農産物検査とは農産物検査法に基づいて民間の登録検査機関が種類、銘柄(産地品種銘柄等など)、品位(等級)、 量目、荷造り、包装などを調べる品位検査、たんぱく質(米、小麦)、アミロース(米) 及びでん粉(小麦)などの含有量を調べる成分検査を行うことを指します。
残留農薬の分析やDNA分析による品種判別などができるため、この検査を通過したお米は安全だと言えるのです。
米の食味検査。「A」(たいへん良い)「B」(良い)「C」(普通)「D」(少し劣る)「E」
一般財団法人日本穀物検定協会では米の流通が多様化してきている背景から、インターネットを用いた「米の情報提供システム」で消費者に対して米の「食味」「銘柄表示」「安全性」に関する情報を発信しています。
お米の鮮度については日本穀物検定協会が開発した鮮度判定試薬を使用して精米1粒ごとの判定を行い、鮮度を「A」(たいへん良い)、「B」(良い)、「C」(普通)、「D」(少し劣る)、「E」(劣る)の5段階に区分した上で情報提供を行っています。
「米の情報提供システム」で検索をし、「たいへん良い」や「良い」の判定を受けたお米であれば鮮度が良く安全なお米だと言えるでしょう。
参考:一般財団法人日本穀物検定協会「食味・銘柄表示・安全性についての用語解説」
まとめ
日本において安全なお米として市場に出回るためには、「農薬」「放射性物質」「カドミウム」「品種」「鮮度」など、複数の安全基準をクリアしなければいけないことがわかりました。
高齢者の方の健康を守るためにも、ぜひ安全なお米を食卓へ積極的に取り入れてみてください。