高齢者に介護食を作る際にはタンパク質が多めに摂取できるよう配慮した方が良いと聞くけれど、どうしてなのかいまいちよくわからないという人も多いでしょう。
この記事では介護食で高タンパクな食事が必要な理由について詳しくまとめてみました。
タンパク質とは
そもそもタンパク質とはどのような栄養素なのでしょうか。
3つの視点からご紹介します。
三大栄養素の一つ
タンパク質は炭水化物・脂質と合わせて三大栄養素と呼ばれ、主に筋肉や骨、皮膚などを作る役割をはたしています。
タンパク質は他の栄養素を用いて体内で合成することはできないため、必ず摂取しなければならない栄養素です。
タンパク質は多数のアミノ酸の結合でできており、肉類、魚介類、卵、乳製品などに含まれる動物性タンパク質と、米、小麦、大豆、野菜、果物に含まれる植物性タンパク質の2種類があるのです。
体内での吸収率は動物性タンパク質97%に対して、植物性タンパク質は84%となっています。
タンパク質の効果
タンパク質の主な効果を食材別にご紹介します。
食材 | 効果 |
鶏むね肉 | 成長の促進・血管の拡張・神経の働きを高める |
チーズ | 肝機能の向上・筋力の向上・精神安定作用 |
卵 | 抑うつ状態の改善・鎮痛作用 |
魚介類 | 体組織の修復・糖の代謝促進 |
豚ロース肉 | 脂肪肝の予防 |
乳製品 | 抑うつ状態の改善・血圧を上昇させる・脳の働きを高める |
大豆 | 疲労の回復・コレステロールの低下・集中力を高める |
バランスの良い食生活を送ることで、タンパク質を効率よく摂取できるのがわかるでしょう。
タンパク質が足りないことで起こる現象
タンパク質が不足すると、身体の機能が低下し体調不良に陥りやすくなります。
具体的には次のようなことが起こるでしょう。
・筋肉量の低下
・肌や髪のトラブル
・集中力の低下
また特に高齢者においては健康障害になりやすい状態である、フレイルを引き起こしやすくなるのが問題だと言えるでしょう。
高齢者がとりたい栄養素「タンパク質」
フレイルとタンパク質摂取の関連については、日本の高齢者の場合男性は1日に48 g、女性は1日に 43.3 g以上のたんぱく質を摂取すると、これよりも少ない量を摂取している場合と比較して、フレイルのリスクが低くなると報告されています。
そのため最新の2020年版「日本人の食事摂取基準」では総エネルギー量に占めるべきたんぱく質由来エネルギー量の割合(単位:%エネルギー)について、65歳以上の目標量の下限を13%エネルギーから15%エネルギーに引き上げているのです。
これらのことから高齢者が介護食を摂る際、高タンパクを意識するのは大切なことだと言えるでしょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」高齢者
高齢者が1日に必要なタンパク質(男・女)
高齢者が1日に必要なタンパク質の量とはどのくらいなのでしょうか。
タンパク質の必要量を推定平均必要量と言い、次の式で計算することができます。
(推定平均必要量)=(維持必要量)+(新生組織蓄積量)
また、タンパク質の推奨量は、 次の式で計算できるのです。
(推奨量)=(推定平均必要量)×(推奨量算定係数)
これを踏まえた高齢者(65~74才)のタンパク質の推定平均必要量と推奨量は次の通りです。
性別 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
男性 | 50g/日 | 60g/日 |
女性 | 40g/日 | 50g/日 |
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)タンパク質」
高タンパク食、おすすめレシピ「白身魚と枝豆のあんかけ団子」
高タンパク低脂質で高齢者の方が食べやすい「白身魚と枝豆のあんかけ団子」の介護食レシピをご紹介します。
材料 (1人分)
・お好みの白身魚(1切れ)
・ゆでた枝豆(3粒)
・はんぺん(10g)
・片栗粉(大さじ2/3)
・塩(少々)
・すりおろし生姜(少々)
・水(160cc)
・粉末だし(小さじ6分の1)
・お好みの野菜(なくてもよい)
・酒(大さじ1/3)
・みりん大さじ1
・しょうゆ大さじ1
・水溶き片栗粉(水15ccに片栗粉大さじ1/3)
①骨と皮を取った魚とはんぺんをフードプロセッサーにかける(骨の取り残しがないかよく確認する)
②①にゆでた枝豆を加え、フードプロセッサーにかける
③調味料類を鍋に入れ、②を食べやすい大きさにスプーンで取って入れる
④③に火が通ると浮いてくるため弱火にして水溶き片栗粉を加える
すり身がやわらかく煮崩れを起こしやすいため、スプーンで取る時は空気を抜くようにして丸めるとよいでしょう。
まとめ
介護食で高タンパクな食事が特に求められるのは、体内で他の栄養素を用いて合成することができない必須栄養素であることと、高齢者が健康障害を引き起こしやすいフレイルを予防するためであることがわかりました。
高齢者は特に筋肉を作る能力が低下していることが多いため、介護食で高タンパクな食事を心がけつつ、適度な運動を心がけるとより体調を整えやすくなるでしょう。
毎日のことでついおろそかにしがちですが、健康を維持するためにも高齢者の方には日ごろから意識してタンパク質を多めに摂取してもらうことが大切です。