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業務用米の不足原因と今後の動向


外食店など業務用に使われる価格が安い業務用米ですが、実はこの業務用米は近年、慢性的に不足しており問題になっています。

具体的には、2017年の農林水産省の試算によれば市場で必要な業務用米は250万トンであるのに対し、業務用米の生産量はわずか120万トンと半分に満たない量しかありません。

当然ながら、業務用米の供給量が少なくなればその分価格は上がってしまいます。

業務用米は普通のお米よりも価格が安く低コストに抑えられるのがその重要な存在意義であるだけに、業務用米の不足は由々しき事態と言えます。


飼料用米への補助金

なぜ業務用米が不足しているのでしょうか。

特に2017年は米自体の不作したことも関係していますが、それ以外の一因として挙げられているのは、飼料用米を作る米農家が増えてきているという状況です。

飼料用米とは家畜などの餌になる米のことで、人間が食べる米と比べると売り値はかなり安いです。

しかし国は2013年に「農林水産業・地域の活力創造プラン」なる施策を決定し、それに基づいて麦・大豆・米粉用米などと並んで飼料用米を「新規需要米」とし、それらを生産する農家に「水田活用の直接支払交付金」として補助金を出すようになりました。

これによって飼料用米の生産は国からの補助金で安定した収入を得られるようになったため、農家にとっては魅力的であり、飼料用米に転向する農家が多くなったというわけです。


ブランド米志向

また業務用米から家庭用米として売るためのブランド米の生産に転向する農家も多いようです。

価格の安い業務用米に比べて、ブランド米は売値が高く、収入増が期待できるからです。

特に食味ランクが「特A」を取っているような有名な産地のブランド米であればお客への求心力も高く、安定した売上が期待できますから、自分たちの持つブランドを生かさない手はないというわけです。

一般のお客さんも、やはり「特A」と言ったブランドをアピールされるとついつい手に取ってしまうものです。

しかし注意するべきは、同じ産地の同じ品種であっても、農家や農協によってはまるで味が変わってきてしまうこともありえるということです。

ブランドが有名だから大丈夫、とは限りません。家庭用米にしても業務用米にしても、産地や銘柄だけですべてを判断することはできないわけです。


業務用米に求められる要素

このように、業務用米はブランド米に比べて売値が低くて儲からない上に、飼料用米のように補助金も出ないため、農家からの人気が低く生産量が減ってきてしまっているわけです。

もちろん家庭用米のブランド米を生産することも大切ですし、飼料用米も畜産を支える重要なものであるのは間違いないのですが、業務用米が不足しているとやはり色々な問題があります。

例えば業務用米は単に安くてそこそこ美味しければ良い、というわけでもありません。

普通のブランド米で「美味しいお米」と言われるためには、大体の場合しっかりとした粘り気がある、歯ごたえがある、お米の甘みがある……という要素が求められます。

しかしそういった「美味しいお米」が必ずしも業務用米としても「良いお米」かどうかは限りません。例えば丼ものを出す外食店で使う業務用米であれば、タレがよく絡むような固めで粘り気の少ないお米が「良いお米」だったりします。

またおにぎりに使う業務用米であれば、握ったときに形が崩れにくいようなお米が求められます。

 このように、業務用米には使う料理の種類によって家庭用米とは異なった特徴の米が求められるため、単純に「多少高くてもブランド米の家庭用米を使えば良い」……というわけにもいかないのです。


JAは業務用米の買い付けを計画

このような業務用米が不足する自体に、全国農業協同組合連合会(JA全農)も動き始めました。

2018年の2月、JA全農は全国の農家に多収米の業務用米の作付けを提案し、長期に渡ってJAが買い付けることを保証するという計画を発表しました。

多収米というのは通常のブランド米に比べて収穫量が多い品種のことです。

2018年の時点では買い付け量は1万トン以上としていますが、2021年からは買い付け量をなんと10倍に増やす予定とのこと。

もしこれが実現すれば、農家にとっては業務用米を生産する大きなインセンティブになり、業務用米の生産量は増え価格も下がることが期待できます。

 日本のお米の消費量は全体で見ると業務用米が3~4割を占めています。

そして、日本のお米の消費量は全体で見ると年々減少しているのですが、業務用米の消費量だけを見ると反対に年々増加しており、今の日本社会において外食=業務用米の需要が確実に高まっていることを証明していると言えます。

業務用米の供給が充実し、安くて美味しい業務用米が流通すれば、外食産業だけでなく国民全体にとって大きな恩恵が期待できるのです。