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業務用米の価格はどう推移するか

目次

外食産業の発展に関係が深い業務用米。業務用米の価格はどのような傾向にあり、相場はどのような状況にあるのでしょうか。

そこで、このページでは

・業務用米とは

・業務用米の相場

・業務用米の価格変動とCPTPPの影響  

などについて解説していきます。


1.業務用米とは

お米は用途により、大きく業務用米、家庭用米、飼料用米に分類されます。そのうち業務用米とは、コンビニのおにぎりや弁当など外食で使われるお米です。農水省のデータでは主食用米の生産は年間約730万トン、そのうち4割が業務用に出荷されています。

業務用米は、何よりもまずメニューに合うものでなくてはなりません。例えば、濃厚な味で香りが強いお米は味付けの濃い料理と相性が良く、繊細な味わいのお米は和食とよく合います。コンビニのおにぎりや弁当には、冷めてもおいしいお米が必要となってきます。

また業務用米は品質、供給量のほか、価格の面で安定していることが求められます。


2.業務用米の相場

業務用米にとって価格は重要です。業務用米は毎日大量に使用する必要があるためです。家庭用米に対して業務用米は低く抑えられています。
例えば2016年7月から2017年6月のデータでは、消費者向け小売価格が1キログラム当たり384円であったのに対して、外食事業者向けは337円、中食事業者向けは321円となっています。
生産者にとっては、高単価で利益率の高い家庭用米、政府からの補助がある飼料用米に対して、業務用米は付加価値が付けづらく、高単価で売れないという面があります。また業務用米は相場の変動の影響を受けやすいという面もあります。
近年、業務用米の仕入れ価格が上昇しています。例えば業務用向けの相対価格(60キログラム当たり)で見ると、2015年度全銘柄平均価格は13,175円でしたが、2016年度は14,307円となっています。
価格上昇の要因としては、政府が飼料用米への補助を手厚くして生産を奨励したことが挙げられます。
2014年度米の価格が過剰在庫により暴落したため、政府は食用米の生産を制限することを企図しました。その結果、飼料用米の生産が増加した一方で、業務用米の生産は減少し、価格が上昇することとなりました。業務用米の生産が減少する一方で、業務用米の需要が高まると、業務用米の価格が上昇していきます。
業務用米の主要なものは、2018年産まで4年連続で価格が上昇しています。2014年産と比べると、家庭用米では1~4割の上昇ですが、業務用米ではそれを上回る3~6割の上昇をみています。
業務用米の生産を伸ばそうと、JAは農家への概算金(集荷時に支払う仮渡し金)を引き上げています。例えば、北海道産のななつぼしの概算金は、2018年産は60キログラム、13,400円でしたが、19年産は13,500円と100円の値上がりをみせています。概算金の上昇は、販売価格へ転嫁されていく可能性があります。
また農水省は2019年、果樹や野菜の生産に補助金を出すとともに、主食米の減産面積に応じても補助金を出すことにしました。これにより、主食米の生産が減少し、ますます業務用米の価格が上昇する可能性があり、食品業界においても不安が広がっています。


3.業務用米の価格変動とCPTPPの影響

外食産業や小売産業は経営が厳しい状況にありますので、業務用米の仕入れ価格の上昇は、レストランで提供される料理やサービスなどに反映され、価格の上昇を招くこととなるでしょう。人手不足のなか、人件費も上がっているでしょうから、価格の面で競争力を保てなくなる業者が出てくるかもしれません。
そして業務用米に関係してくるのが、外国米です。日本はアメリカが環太平洋パートナーシップ協定から脱退した後、11か国で環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に書名しました。CPTPPは2018年12月から1月にかけて、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナムで発効しています。
輸入するお米には1キログラム当たり341円の関税がかけられていましたが、一定量を無関税で輸入することとなります。これまでは価格面からもほとんどの消費者は国産米を買っていましたが、安い外国米が入ってくると状況が変化するはずです。
農水省は国産米1キログラム当たりの価格は、200円にまで下がると試算しています。外国米は国産米の4分の1とされています。当然、業務用米にも影響を与えることでしょう。外国米にも日本人になじみ深いジャポニカ系のお米があり、日本人にも受け入れられるとみられています。


4.まとめ

以上、業務用米とは何か、業務用米の相場、業務用米の価格変動とCPTPPの影響についてみてきました。

業務用米の価格動向は、われわれにとってもとても身近な外食産業に深く関連しています。外食産業が発展し、業務用米の需要が伸びるなか、業務用米の生産はどのように推移していくのでしょうか、今後が注目されます。