現在、業務用米の高騰が続いています。ニュースでも外食産業・中食産業で米を使った料理の値上げやサイズダウンが実施されているといった報道も多く、「今後業務用米がどうなっていくか」「今、業務用米を使い始めてもメリットがあるのか」不安に思う方も多いと思います。
ここでは業務用米の現状や今後の業務用米の生産がどうなると予測されているのか、コストダウン以外の業務用米メリットについてなどを紹介します。
業務用米不足の現状
2017年の統計では国内の業務用米必要推定量が250万トンなのに対して、業務用米の生産量が120万トンと130万トンも不足しています。
この大幅な業務用米不足の原因として以下のような事柄が考えられています。
●需要の増加
・共働き世帯や高齢世帯の増加にともなった中食・外食産業での米の消費量の増加
●政策の影響により業務用米を増産しにくい
・減反政策による食用米を生産している田んぼの減少
・政府から補助が出る飼料米(家畜のエサとなる米)を生産する農業従事者が多い
●農業従事者への情報が少ない
・家庭用米のイメージから粘り気があり柔らかい品種を積極的に作る農業従事者が多い
・農業従事者の中では高品質なブランド米への注目が高く、価格の高いブランド米の生産に力を入れている方が多い
・今後の米の価格推移が不透明で、増産に踏み切りにくい
これらの複合的な原因により業務用米が不足・業務用米の高騰が起こっていると考えられています。
●近年の業務用米需要の急増で輸入米が増える?
最近、テレビでも業務用米の不足からメニューの値上がりやおにぎりのサイズダウンといったニュースが報道されています。この大幅な業務用米不足の原因にはさまざまな要因がありますが、最も大きな原因は「共働き世帯・高齢者世帯の増加による中食・外食での業務用米需要の増加」です。
下のグラフは国内の家庭で消費される米と中食・外食で消費される米の割合を示しています。
今後も業務用米を使い続けられる?
結論からいうとこの大幅な業務用米不足は今後解消されていくと予測されます。
これは政府や都道府県、公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が業務用米の不足に対して対策を立て始めているから。現在行われている具体的な対策は以下の3つです。
・平成30年産の米から減反政策を廃止し、業務用米の生産を後押しする(政府)
・米農家への業務用米生産の呼びかけ(政府・公益社団法人米穀安定供給確保支援機構)
・栽培量を多くするために設定されている「産地品種銘柄」で業務用米に使用する品種が増加した(都道府県・政府)
これらの政策からか、栃木県・福島県・岡山県などの特定の都道府県では業務用米の生産割合が増え出しています。さらに、業務用米の生産割合が高い上位9県ではすでに家庭用米よりも業務用米の方が多く生産されているなど、多くの県で業務用米の生産量が多くなりつつあります。
参考:農林水産省「米に関するマンスリーレポート」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/mr-19.pdf
また、政府や都道府県では今後も米の増産を妨げていた「減反政策」の廃止や業務用米品種を奨励品種に認定するなどさまざまな対策を打ち出す予定です。
このようなことから「業務用米が不足し続け、利用できなくなる」といった事態におちいる可能性は低いと思われます。
安いだけがメリットじゃない、業務用米のメリット
業務用米に切り替えるメリットというと「材料費の軽減」や「コストパフォーマンス」に目が行きがちです。しかし、業務用米にはこの2つ以外にも大きなメリットがあります。それは
「メニューにあった品種を選べる」
ということ。
日本の家庭用米の多くは「柔らかく粘り気の多い」白米単体で食べるための品種です。しかし、牛丼やカレーなど汁気のあるおかずを乗せる場合やチャーハンのように米をパラパラに仕上げる場合、おにぎりのように握る場合ではこの「柔らかく粘り気が多い」という特徴がネックになってしまいます。
一番身近な「おにぎり」を例として見てみましょう。おにぎりが美味しいと感じる条件は
1.食味:甘みや旨味
2.食感:粒感
3.適度な硬さ:歯ざわりや歯ごたえ
4.ねばり:米のねばり
5.のどごし:のどで感じる心地よさ
6.くちほどけ:おにぎりを口に入れた時に感じる心地よさ
7.包容力:具材との相性や相性の良い具材が多いかどうか
8.冷めても美味しい:5時間後の食味全般
の8項目です。
家庭用米の品種が満たせる項目は食味や粘り気、包容力程度で良くも悪くも「いつもの味」と感じるおにぎりになってしまいます。その点業務用米の品種からおにぎりに最適な品種を選べば、上の8項目を満たせ、多くの人が「美味しい!」と感じるおにぎりを作ることができます。
実際、一般社団法人おにぎり協会で行われた「おにぎり食味会」では新潟県産コシヒカリを抑え、「にこまる」「つや姫」という普段聞くことが少ない2品種がトップにランクインするなど、メニューに最適な品種や銘柄を選ぶ方が料理が美味しくなるのは明らかです。
大手外食店や有名料理店でもメニューに合わせた特性を持ち合わせた品種を指定して米を購入している場合がほとんど。より美味しいメニューを提供するためにも、さまざまな特性を持つ業務用米の中からメニューに最適な品種を選んでください。
まとめ
現在、業務用米は大幅に不足しています。しかし、政府・都道府県・公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が「今後も業務用米の需要が伸びる」と考えさまざまな対策を立てているため、現状の業務用米の大幅な不足は続かないと予測されます。
また、業務用米は家庭用米とは大きく異なる特性をもつ品種や銘柄が多くあります。メニューに合わせた品種・銘柄を選ぶなら業務用米を利用するのがおすすめです。
株式会社みどりフーズは専門の米食味鑑定士が多数在籍するお米専門の卸会社です。
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